1月からの記録:トッド・ソロンズ編

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トッドソロンズはwelcome to the dollhouseのあのモヤっとしたいや〜な感じが後を引いて。
これもモヤっと。
冒頭の歌が好き。
ピンク(?だっけ?)の髪の文学部女子大生役の子、なんだ見たことあるけどわからん、と思ったらセルマブレアでした。
水色のブルマみたいな名前だよね。
このセルマブレアの役は・・モヤっと。と言うのが一番いいのかねなんとも形容しがたい。
「黒人を差別するな差別するな」って自分に言い聞かせて人権という余裕を持たせて相手に対峙するあの感じ。
imdbか何かのレビューで、「リアルすぎて痛い」って書かれたものがあったんだけど、そんな感じ。
なんかでもすごいわかるわー
ああうまく言えない。
著名作家で大学教授も勤める先生の右横に陣取る眼鏡を掛けたブルネットにセクシー要素足してみました、みたいな女の子もね
なんかすげーリアル。
あの雰囲気と見た目、いかにもあの仕草と口調で惜しげもなく目の前にいる同級生(の創作)を批判しそう。
いいとか悪いとかじゃなく、リアル。


この映画を観た人がほぼ異論なしに「むかつくよね!」「ね!」と盛り上がれそう、なマイキーって名前が似合いそうな子供。
non fiction章で、アメリカンスプレンダーで冴えない主役を冴えなく演じてたあの人(名前覚えてない)がドキュメンタリー映画を撮るためキーパーソンに選んだ冴えない男子高校生の弟です。
あーむかつくよ、このむかつかせ具合もリアル。
一番むかついたのは、孫のヘススがレイプ容疑で有罪になり、死刑になったことを憂いてスペイン語でぶつぶつ嘆くメイド・コンスエロとのシーン。
speak in english.
im sorry consuelo, but unless you dont speak english, i cant understand you.
いや、もっともなんだけど、尤もなんだけどでもすごく深読みさせるシーンと台詞、状況でもある。
でもなんと言ってもこの時の子供の顔がむかつくんですよ。
顔のパーツ全てが子供と主張した大きいもので、唇と目なんて水分たっぷりで
そんでパジャマ着てんの。
その顔で「でもごめん、下でジュースこぼしちゃったから拭いて来てくれる?いますぐね」みたいなことを言うんですよ。
わーむかつく。
このむかつきを緩和させるモヤっとは何かと言うと、
マイキー(仮につけた。ほんとの役名忘れたけどこれのがしっくりくるよ)がはまっている催眠術。
遊んでるだけだと思ったら父ちゃんマジで催眠にかけてるからね。
どんな催眠かというと、「3人兄弟の中であなたが一番可愛がるのは僕です。ジョン(仮名、事故で昏睡状態に陥った二番目の兄。)が死んだら、しばらくは悲しみますが、その後も一番可愛いのは僕です。僕が欲しいと言ったものはなんでも与えます。それからメイドのコンスエロのことですが、あの人はクビにしなさい。ダメな人です。」みたいなやつ。
すげーよ。

マイキーとコンスエロとのやりとりはすごいものが多い。
食卓で宿題に取り掛かるか夕食を摂っているかしているマイキー。
コンスエロはキッチンでコンロを磨いたりと仕上げの仕事に励む。
どんな脈絡か忘れたけど、
コンスエロが「だって、今も私仕事してるんですよ」と言う。
「そうかな、君は幸せに思うべきだよ。だってそんなとっても楽なことが仕事なんだから」みたいなことをマイキーが言うシーン。
だめだ、こういう台詞じゃなかった。かなり大枠でこんな感じの台詞なんだけど。
マイキーのそのありがたく思いたまえな台詞に、コンスエロはさすがにむっとする。

マイキーはむかつくけど、むかつかせる性分なだけで、意地悪くしようと思って言ってるわけじゃないんだよね。本当にそう思ってる。人に対してマイキーがとっている態度はすべて揺るぎがない。そうすべきだと思ってるし、そう言うべきだと思ってる。もし人に対して「こうすべき」だと思ったら、それは絶対でその人がマイキーが「こうすべき」と思ったことを実際にするにしてもしないにしても変わらずに正しい。
この揺るがない、自分と自分が思い考え行動することに対する肯定。子供らしいというと子供を馬鹿にした風に聞こえるけど、「子供」っていうキャラクターを凝縮してディフォルメしたのがマイキーなんだと思う。
ここで言う「子供っぽさ」以外の何かまた別のものの象徴でもある感じはあるけど。
というより、この「子供っぽさ」自体が何か別のものを象徴しているというか。


しかし、レイプ犯の孫についてマイキーと話していたコンスエロが「レイプって何?」と聞かれ、言葉に一瞬詰まりつつも
「好きな人ができて、でもその人が自分のことを好きになってくれない時に、どうにかすることよ。」と説明したコンスエロもすごい。
そしてマイキーも「どうにかするって何?」と食い下がる。さすがマイキー、いかにも言いそう。
続けてマイキー、「僕はパパとママのことが好きだけど、あんまり愛されてない気がするよ」と口にする。
その後コンスエロがたしか「大人になったら、どうにかしなさい」
と言った気がする。
すごいプロットです。すごいです。
でもものすごいモヤっと感とリアリティ。
この後、別に大人になってないけどマイキーはマイキーなりの方法でとりあえずパパを「どうにかする」わけだよね。
催眠術で、自分を父親の最優先順位の座につける。
父親はそれと知らないうちに息子にレイプされたわけだ。


ちなみにコンスエロは催眠術レイプされたマイキーら3人の父親により本当に解雇される。
その後で、一家の家に深夜忍び込み、窓の隙間をテープで埋めてガスを蔓延させ一酸化炭素中毒により真ん中の子供を除く家族全員を死に至らしめる。
コンスエロは誰に横恋慕していたわけでもないけど、「どうにかする」のまた別のかなり究極な手段に見える。
夏の、まだ少し明るさが残る夜明け前に、アメリ中流家庭の家が立ち並ぶ住宅地の中、背を丸めて辺りを窺いながら小走りでフレームインするコンスエロのカットはかなり印象に残る。